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2月17日、蝶々結び

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思えばきみは出会った時から、なつかしい人でした。

 

白い鳥たちが飛び立つその音を聞いた。

うんと寒い海にはまだお昼間だというのにまったく人気がなく

私はそこでただのひとりきりだった。

広い海を見ていると、そのことがもっともっと染み入ってくる。

いつもそう、ちいさなことが意味を持ちすぎる。

 

話すことなら、ある。

どうでもいい今日を

ほんとうは大事な今日を

どうしようもなく泣いてしまった今日を

届けるんなら、きみへ。

誰にでも話したいわけじゃない。

 

泣き腫らしたきみの目に

そっとくちづけたい夢でも見ているようで

私だってね、まだうまく歩けそうにない。

 

思えばきみは出会った時からなつかしい人でした。

ありがとうありがとうありがとうの午前4時。

願わくばきっとまた笑って。

 

 

 

 

 

2月7日、あなたに電話しない夜

 

見慣れた帰り道

電車に揺られながら覗き込む夜。

今日はあまりきれいだとは思えなかった景色。

そういうものも、あるのだ。

何でもかんでも感動していられない日というものが、あるのだ。

雑多でとりとめのない限りのないグレーの生活が、

真面目な顔でうごめいているだけ。

 

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素晴らしい夜もあったの。

すべて許せてしまう夜もあったの。

 

あなたは元気かなあ

電話をしない夜を何度も繰り返す

あなたのルールを思い出す

あなたのことも思い出す

そうやって同じ場所でたった一人のあなたに何度も出会う

誰かが堂々巡りと言っても、わたしにはいつも初めてのこと。

そんなわたしにあなたはつよいひと、と笑う。

 

つよいひとになりたい

いつかの魔法使いが言っていたような。

つよいひとになりたい

あなたの袖口に触れてはじめて、思った。

 

 

 

 

1月23日、YAMABIKO

 

わたしのとこ、風が強い

あなたのとこ、風は吹いている?

 

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冬、そういってしまったら、おしまいでしょう

雪、そう書いてしまったら、かなわない

 

あなたに出会った季節のこと

束ねておく必要は、どこにもない

 

’書くこと’は罠だ

 

書く時間はとてつもなく、つらく、こわい。

風呂にも入らない日々が続くことだってある。

弔いに向かう面持ちで、ペンを握る。PCに向かう。

やりたくない、とごちる。

けれどつづけていることなど、他にない。

 

誰になりたくて歩いているんだろう

そう言っていた、わたし

歩き出す。

今はもう迷いがない。

 

 

「わたしは風だ」

そんなふうに思っていた。

「去り際のタイミングを掴み損ね」たまま

なつかしい場所でいつまでも揺れているだけの。

あたらしい夢を見ることに憧れたままの。

青の時代に手をつないだ人たちの温度を魔法瓶にいれたっきりの。

何かが変わってく予感に鈍感なままの。

 

けれど風は吹いていた。

いつも、そこに吹いていた。

どこに連れてくのと見上げたそばから

はたりとやんでみせたりするから

風、そうだね、

わたしは自分で歩いていこうと思うよ。

 

 

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ねえ、風。

あなたが知ってる朝が見たい