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2月27日、口づけ

 

泣いていても眠っていても続く。

酔っ払ってフラフラゆらゆらと千鳥足でも

湯船に頭から潜ってボウルの中のアサリになっても

きみと手をつないでこの世で1番いい気持ちがしても止められない。

死ぬまで脱ぐことができない。

100年たったらみんな死ぬ。

それはどこか甘やかで安心のすることだ。

永遠に生きるなんてまっぴら。

 

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桜のつぼみが枝の先にぷくりとついているのを見て

もうすぐ春なんだ、つぶやく。

風も穏やかな日がある

この体、吸い込めるならいつまでも季節には敏感でいたい。

 

会うたびに、覚えておこうと思うようになった。

目、鼻すじ、口、首から肩の永遠みたいな水平線

鎖骨を舐めた、背中の匂いをかいだ。

ホクロの位置を星座板を眺めるみたく、くるくると見つめた

それらをゆっくりとなぞろうとする。

きみはわたしの好きなひと。

愛は与え続けるものだ、言葉がひびく。

わたしの愛はきみにずっとずっと与えられるものだ。

けれども言葉だけのことじゃない。知っている。

 

思い出そうとするとあくびが出る。

目をつぶると力が抜ける。

ふふふ、と笑みがこぼれる。

安心をたずさえてきみのことばかり考える。

ありふれたことだ。

恋してる、と声に出してみると本当になるような恋。

愛してる、と声に出してみるとちっぽけになるような愛。

 

好きな人たちのそばにいたい

まだまだずっといたい

脱ぎ去ることのできない人生を歩いてく。

 

 

 

 

 

 

 

2月17日、蝶々結び

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思えばきみは出会った時から、なつかしい人でした。

 

白い鳥たちが飛び立つその音を聞いた。

うんと寒い海にはまだお昼間だというのにまったく人気がなく

私はそこでただのひとりきりだった。

広い海を見ていると、そのことがもっともっと染み入ってくる。

いつもそう、ちいさなことが意味を持ちすぎる。

 

話すことなら、ある。

どうでもいい今日を

ほんとうは大事な今日を

どうしようもなく泣いてしまった今日を

届けるんなら、きみへ。

誰にでも話したいわけじゃない。

 

泣き腫らしたきみの目に

そっとくちづけたい夢でも見ているようで

私だってね、まだうまく歩けそうにない。

 

思えばきみは出会った時からなつかしい人でした。

ありがとうありがとうありがとうの午前4時。

願わくばきっとまた笑って。

 

 

 

 

 

2月7日、あなたに電話しない夜

 

見慣れた帰り道

電車に揺られながら覗き込む夜。

今日はあまりきれいだとは思えなかった景色。

そういうものも、あるのだ。

何でもかんでも感動していられない日というものが、あるのだ。

雑多でとりとめのない限りのないグレーの生活が、

真面目な顔でうごめいているだけ。

 

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素晴らしい夜もあったの。

すべて許せてしまう夜もあったの。

 

あなたは元気かなあ

電話をしない夜を何度も繰り返す

あなたのルールを思い出す

あなたのことも思い出す

そうやって同じ場所でたった一人のあなたに何度も出会う

誰かが堂々巡りと言っても、わたしにはいつも初めてのこと。

そんなわたしにあなたはつよいひと、と笑う。

 

つよいひとになりたい

いつかの魔法使いが言っていたような。

つよいひとになりたい

あなたの袖口に触れてはじめて、思った。