tayutauao

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3月1日、17歳

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いろんなところがいたくって

うまくねむれないそんな夜

 

あの子のなだらかな肩が

わたしの地平線だった頃

 

まるで幼いままの反逆精神で

どこへも行けないと知りながら

どこまでも歩いたあの日

 

だれかに愛されたくって

それ以上にだれかを愛したかった

 

生きづらくて生きづらくて

見せつけるようにして開けたピアス

痛みに何かを逃したけれど

なにを逃したのかは今も分からない

 

すべてをかけて信じることは

いつも とても むつかしいことで

世界は少しだけ愛しづらいまま

 

わたしはなにか変わっただろうか

 

 

 

 

3月1日、僕らしさ君らしさ

 

とびきりの3月

ささやかな春の匂い

だからというわけではないにせよ

リビングに咲いてはったカーネーション

何輪か摘んで部屋の流木に吊るした

 

コットンフラワー

紫陽花

バラ

かすみ草

ユーカリ

 

ドライフラワーは好きだ

触るとぱらりぱらり

繊細な出で立ち

軽くなったからだ

カサカサと揺れる姿に

思考、発想をもらう

 

部屋にはマリアの十字架がかかっている

いつかタトゥーにして首の後ろに入れたい

 

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知らない人に会いたい

いちばんに会いたいのは見知らぬまんまに別れる他人。

死んだ恋人だった人に似ている人と横断歩道ですれ違ったことがある。

声をかけることもできずに、ただただ目で追った。

肩をぶつけたかった。

すみません、と言ってそれだけでよかった。

その人は知らない人だから。けれど知っている。

 

思い出そうとするとついてこないものが多くて

こんなところまで歩いてきたのだと思い知る。

冬、終わるのが悲しいなあ。

恋人だった人が死んだのは冬だった。

バラバラの感覚を束ねる時ほど野性的な時間は切実なものとなる。

わたしのゆるゆらとした時間の中で

そんなことも起こるのだ、と切なくなった。

 

ゆるやかな今だけの坂道をのぼる

まだ足指の冷えは取れないにしても

来たる、春

わたしは桜を見て泣くのだろうか

センチメンタルを許して。

たったひとりきりで美しくなってしまった人を思い出させて。

 

 

 

 

 

 

2月28日、神様

 

朝には朝の

夜には夜の

 

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何もできなかった

何者にもなれなかった

続けてきたことは

ただ、書くこと

 

読んできたものは

時に友人のようにわたしを支え

時に聖母のように暖かく拾い上げ、救い上げ

時に悪魔のように孤独の淵へわたしを追いやった。

 

好きな本に、「学問には王道しかない」という言葉があります。

ペンを握るのが私の道ならば、私は近道などせず、「王道」を歩みたいと思いました。

この場合の王道とは、歩くのが易しい道ではなく、

勇者が歩くべき清く正しい本道のことを意味します。

 

それは人間の美しい生き方を表しています。

美しいというのは、そういう姿勢を表す言葉だ、と恩師に習いました。

「さて、王道はどちらだろう」と考えると、それは大抵、

歩くのが難しい方、抵抗が強い方、厳しく辛い道の方でした。

 

ニーチェの書いたデーモンが語ったように、

人生を桁外れに愛おしく思わなければならないとすれば、

永久に繰り返す人生を望む超人になるためには、

美しく生きねばならないと私は考えます。

何ら新しいことはなく、苦痛も快楽も、考えも溜息も、

生の言いようもなく小さなことも大きなことも私に帰ってくるのであれば、

たった1点、信ずるべきものがないといけない、それが美しさだと思ったからです。

 

わたしはどこへ舟を漕ぎだそう。

たったひとりきりで、どこまでも行こう。

朝には朝の

夜には夜の

その時にしか歌えない歌を歌って。

 

 

 

 

 

 

 

2月27日、口づけ

 

泣いていても眠っていても続く。

酔っ払ってフラフラゆらゆらと千鳥足でも

湯船に頭から潜ってボウルの中のアサリになっても

きみと手をつないでこの世で1番いい気持ちがしても止められない。

死ぬまで脱ぐことができない。

100年たったらみんな死ぬ。

それはどこか甘やかで安心のすることだ。

永遠に生きるなんてまっぴら。

 

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桜のつぼみが枝の先にぷくりとついているのを見て

もうすぐ春なんだ、つぶやく。

風も穏やかな日がある

この体、吸い込めるならいつまでも季節には敏感でいたい。

 

会うたびに、覚えておこうと思うようになった。

目、鼻すじ、口、首から肩の永遠みたいな水平線

鎖骨を舐めた、背中の匂いをかいだ。

ホクロの位置を星座板を眺めるみたく、くるくると見つめた

それらをゆっくりとなぞろうとする。

きみはわたしの好きなひと。

愛は与え続けるものだ、言葉がひびく。

わたしの愛はきみにずっとずっと与えられるものだ。

けれども言葉だけのことじゃない。知っている。

 

思い出そうとするとあくびが出る。

目をつぶると力が抜ける。

ふふふ、と笑みがこぼれる。

安心をたずさえてきみのことばかり考える。

ありふれたことだ。

恋してる、と声に出してみると本当になるような恋。

愛してる、と声に出してみるとちっぽけになるような愛。

 

好きな人たちのそばにいたい

まだまだずっといたい

脱ぎ去ることのできない人生を歩いてく。

 

 

 

 

 

 

 

2月17日、蝶々結び

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思えばきみは出会った時から、なつかしい人でした。

 

白い鳥たちが飛び立つその音を聞いた。

うんと寒い海にはまだお昼間だというのにまったく人気がなく

私はそこでただのひとりきりだった。

広い海を見ていると、そのことがもっともっと染み入ってくる。

いつもそう、ちいさなことが意味を持ちすぎる。

 

話すことなら、ある。

どうでもいい今日を

ほんとうは大事な今日を

どうしようもなく泣いてしまった今日を

届けるんなら、きみへ。

誰にでも話したいわけじゃない。

 

泣き腫らしたきみの目に

そっとくちづけたい夢でも見ているようで

私だってね、まだうまく歩けそうにない。

 

思えばきみは出会った時からなつかしい人でした。

ありがとうありがとうありがとうの午前4時。

願わくばきっとまた笑って。