tayutauao

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5月4日、audition

わたしのことばは、どこまでいっても

誰かに伝えたいことばじゃない

残したいことば

けれどその強度を信じている

ことばの全てがわたしを挑発する

 

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春はいけない

やはりいけない

 

浴びせかけられる言葉のシャワーに溺れて

口はパクパクと魚のごとき虚空を噛む

 

溺れるほどのたしかな言葉

渡しそびれた想いが

もう行く場所なんてないのに

どこまでもいつまでも

貝殻を耳に当てた海鳴りのように

うるさくてうるさくて

今はまだどこへも行けそうにない

 

 

 

 

 

4月20日、雪と砂

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「いちばんとんでもないのはあなただわ」

 

なーんもやらない

なーんもしてこない

学校にもこない

けど見つけちゃったんだなって。

行ってしまったんだなーって。

それで学校に来なくても構わないのよ。

見つけちゃったんだから、それ以外できなくってもいいんだよ、別に。

わたしはそういうのだいすき。

かっこいいじゃん。

 

けど、残念だったのは戻ってきたとき さみしそうな目をして戻ってきたことだったなあ。

学校に来なかった自分を認めてないんだもん。自分で決めたのに。

そっから何しても、申し訳なさそーにしててさ、目が泳いでるの。

それと、それならそれでかっこよく宣言して欲しかったな、学校来なくなる前に。

で、そっからはいいじゃん、堂々としてれば。

わたし学校休んで写真やってましたって。写真展してました。本つくってました。

写真のことばっか考えてて学校のことなんて考えらんなかったんですって。

 

ほんっと面倒くさいよ。

あなたがいちばん面倒くさい。

けど、わたしはだいすきなんだよね、そういうの。

 

 

「一方では感性的で、一方では知性的ではならない。

 感性と知性を媒介するものは何か?

 その知性は感覚的な世界にも宿っているはずだ。」

 

というメモがiPhoneにあった。

そんな何年も前に書いたそんなメモのこと忘れていたのに、瞬間にピンと思い出した。

先生のことだと思った。

 

表層にあるものというよりは、その1つしたの水脈を流れている何か。

マヤの乱暴な緑の中に突然現れた窓みたいな遺跡を見た時に

「エレガントだ」と言っていたこともそうだし、

卒論は作品だというその言葉にしても、

うつくしくない発掘現場って一体何なんだろうっていうあの怒りも、

おそらく緒のようなものだった。

先生は感性的で、知性も兼ねて、うつくしいことを愛していて、そのことを学問されている。

すべてが普段から見えているものでは決してないけれど、

先生の根っこにあるものだということは知っていた。

 

だからわたしは先生のやってることとか言ったことよりも、

学者である以前に先生を成り立たせている信念やそれが雄大に流れている水脈を

圧倒的に好いているし、信じているんだなと思った。

だからだいすきなんだって言ってもらえたら、とても、うれしい。

 

この人の前でかっこよく在りたい、うつくしく在りたいと思える人がいるのはしあわせなことだ。

そのために学問は必要なのだな。自分の哲学をしなければならないのだな。

何を選んでも自分が信じること。認めること。責任を持つこと。持とうとすること。目を見て話すこと。

気持ちだけでなくこれから見せるすべてを大事にしたい。

 

 

横たわる樹木とヘビには

地層と水脈という言葉が似合うと思った

ぬっとりとした中米の熱帯雨林の中でひっそりと佇む。

そして、先生のことを思い出す。

私にとって革命であり続ける人。

 

 

静物画のような

動きのゆったりとした

写真を撮ること、選ぶことが

多くなったなと感じる

 

それは今あるものをすんなりと受け入れるちから

 

 

 

4月16日、通学路

 

あのころ肺に一生懸命吸い込めていた空気が

幻だったかのようにこの体をあたためている

 

愛想笑いで過ぎていく日々もいつの間にか過ぎて

はらはらと舞う、今日という式日

明日のことなど考えずに眠る猫の健やかな体

味気ないのは作りかけのご飯

言って欲しかった言葉

 

正しく夜を迎えることを思い出すのは

少し夜更かしをするときだったりするね

 

理性と知性が大切だという愛おしいきみのこと

追突事故で真っ先にわたしのことを心配したきみのこと

わたしを置いて世界からいなくなってしまったきみのこと

こんな気持ちが一体なんになるのだろうと思いながら

きみが、誰に見せるでもないけれど一等の宝物です

 

車の中で聴いたのは青い春を与えてくれた懐かしい音楽

対向車線のヘッドライトが乱視で拡散してちょっと涙を浮かべた

大きなものに見られている感覚が宇宙を教える真夜中

もう、うずくまっている時間はないと思えた

 

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しあわせな夢。

夢が叶う夢。

 

私の運命を変えた人が

あの控えめな立ち姿で

私を迎えに来た。

君の夢は叶った、と

そして私は言う

「夢ならまだあります」

 

そう夢ならまだあるんだ、と

ただ俯瞰してくる空を讃えた。

そして今年も花が散る。

 

 

 

 

3月25日、のうぜんかつら

働いているところの事務所には

「好きになれば何事も続けられる」という言葉がかかっている。

少し乱暴なその言葉に、ぱっと励まされることがある。

素直なものだ、と乾燥しきった肌を撫でる。

 

夢を追いかけることにしたら、生活にメリハリがつくようになった。

途端に輪郭を持ち始めたそれに、今、戸惑うことはない。

失うものはなく、足りないのはお金と健康な体だけだ。

叶うものと叶わないものがあって、ふわっとうずくまりそうになる。

やりたいことのある人生を、やっと好きだと思った。

 

誰かの甘い言葉も、つらい時の涙も、愛も、聖母も、

寝返りを打つばかりの布団にくるまっている。

いつのまにか、ほとんどを寝て過ごしてきた。

そのくせは抜けずに、今日も寝癖がひどい。

 

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暖かかくて、柔らかく、

それ以外をどれだけちからづくで立っていたかを思い知る季節。

優しい気持ちで空を見上げる時には広がっていくものだけを感じる。

もう蕾は膨らみ始めていて、お母さん、とつぶやいた。

 

 

 

3月4日、voice

 

 

今日はとてもとても暖かくて、動き出す

桜色の服と薄いグレーのパーカーを羽織って、動き出す

髪はくるくると寝起きのままで、動き出す

明日乾く涙を拭わずに、動き出す

 

何にも考えずに、体だけになることは難しいこと?

宇宙的なスケールで、あたまを揺らすのは可能なこと?

メモのような生きてることそのもののような

このカキモノに名前をつけるなら何にしよう?

 

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わたしには愛しかないから

だからきらめくものがある

それは時々、水面にうつった道のように揺らめく月明かりみたい

それは時々、体の中に蝶が舞うみたい

 

あなたの中にわたしはわたしを見つけるし

わたしの中にあなたはあなたを見つけるの

 

非日常がわたしを迎えにこないから

わたしが非日常になってきみを迎えに行こうと思うの

いいアイデアでしょう?