7月10日、DRIVE
"風の音がして自分が息をとめていたことに気付いた。"
今日はめずらしく、音楽を聴かずに学校から帰ってきたのだけど
そういうフレーズが、頭に浮かんだ。
「なんだっけ、なんだっけ。」
そうそう、久しぶりに映画館で映画を見た時のことだ。
わたしは映画館でうまく映画を観れない。
息を止めてしまうから。
「トイ・ストーリー3」を見た時は、アンディと自分が重なって見えて号泣。
見終わった後に酸欠でしばらく立てなかった。
視界にようやく収まる大きなスクリーン
振動なのだと体でわかるほどの音の波
どこに自分を据えればいいのかわからなくなる。
処理しきれないほどの映像が、物語が、音が、押し寄せるから
自然と乱れる。吸ったり吐いたり、が危うくなる。
溺れるでもなく、忘れてしまう。
わたしは息することを、ただただ、忘れてしまう。
駅からうちに帰るまでにお気に入りの夏みかんの木がある。
この季節はもう濃くてかたい緑の葉がどっさりとついていて
それしかないはずなのに、その木には、
冬にちいさい太陽みたいな黄色の実が1つだけなって、
落ちずにくっついたままだった。
秋とか冬にこぼれそうなくらい光をいっぱいに吸った
きれいな真っ黄色は褪せてうすくうすくなり、
その実は日焼けしたみたいに少し茶けて見える。
そっかそっか。
落ちるべきに落ちるとか
もぐべきときに、きちんともいでやるとか
そうでなきゃ、いつまでも残ってたってそのときのまんまでいられないんだなあ。
「きっとあの夏みかんの中身はカスカスだ。虫が食っちゃってるかもしれない。」
今になって気付くことになるほど、色も、存在も、うすくうすくなっていた夏みかん。
涙腺を刺激するのはこういうことなんだなあ、と妙に冷静なわたしと夏みかん。
去年はこの畑、落花生が植わってたんだけど、今年はネギみたいなやつなんだよ。
春に毎日のように写真に撮った桜の木のこと。
ここは世界の淵みたいに思えるんだ。
雨が降ると光が膨らんできらきらきれいになる高速道路のこと。
ペンギンがすき。その次はキリンで、その次はシロクマ。
髪の毛染めたけど、もう色抜けてきちゃってて、でも前に染めたときは
3日ももたなかったことを考えたらよくもってる方かも。
夕暮れより夜明けが好きなことや、それがどんな風にきれいなのか、どう心が動くのか。
そういうの、うまく伝えらんないんだ。
「そういうのほど、伝えらんないんだ。」
今はだれかと蜜に過ごす時間があるとしたら、
たったそれだけの時間がすべてなんじゃないかなあって思ってる。
「世界の淵ってどんなとこだろうね?」
-自分が真ん中じゃないんなら、案外わるくはないのかも。-