8月11日、向こう岸が見る夢
小学生のころはプールに通っていた。
水が好きだったから。
いつまでも水の中にいたかったから。
プールの底にあつまる光がきれいだったから。
自分にできることよりも
できないことばかり考えてしまう夜中。
2時間前に浴びたシャワーをまた、浴びた。
はやく走れないからかけっこは嫌いだった。
何度やっても間違うから算数は苦手だった。
骨を上手にとれないから魚を食べるのが好きじゃなかった。
スイスイ泳げるんじゃなかったのに、水中では自由だった...ような気がする。
地面の上にいるよりもずっと自分の思うままだった...ような気がする。
プール行くのが嫌になったのは一度溺れかけて、塩素くさい水を鼻で思いっきり吸ってしまったからだったもの。
とべない鳥は、誰もいない砂漠の上をとんでみたいと願ったことはあるのかな。
だけどそういえば、わたしは水中めがねをつけなければこわくて目もあけられない子どもだった。
足の届かない深いプールで泳ぐときにいつも溺れやしないだろうかとソワソワ落ち着かぬ子どもだったのだ。
だから、あまいあまい溜息をつく。
だから、あまいあまい溜息をシャワーに溶かす。