tayutauao

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3月30日、明日を落としても

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1人で煙草を吸うときは大体悲しいとき。

どうしたらいいのかわからなくて吸うことになる。

やわらかいつむじ風が耳の上のまあるくなった部分をこそばゆくする。

まだすこし寒い春の日。

 

茶、ゴールド、茶、茶、ゴールド

左手指のツメの色。

ほんとうは寂しさを感じているのね

なんといったらいいのかわからないけれど

そう、なんといったらいいのかわからない程度の

寂しさを抱えてわたしはこちら側の木のある世界で生きている。

 

たまに”もう書けない”というような気がするときがあります。

生みの苦しみ?

いや、そんなものじゃない。

とっくに別れてしまったものだという感覚。

空になったスウプボウルを覗いても見えない

シンクのボウルの中で砂をはくアサリの気分

洗い上がりの洗濯物を嗅いでも匂ってこない

たとえあったのだとしても別れてしまったのだからもう見えない

すべてが味気ない。感動もしない。

光はまぶしかったか?

お茶は熱かったか?

ペンの色は黄色だったか?

 

少し酔いたいと思いました。

少し眠りたいと思いました。

 

それでも思い出してみる。

あの写真が美しかったのはどうしてだったろうか

あの小説の物語が美しかったのはどうして?

恋人の薬指に光る指輪はきれいだったでしょう?

真夜中に道で踊ったダンスはきっと美しかったはずです。

 

季節の変わり目はいけませんね。翻弄されて仕方ない。

それでも頭に突きつけられたピストルを引けば花束がぼんっと出てくる

わたしにとって人生は贈り物だったのだと、今なら思える。

あの人にざまあみろと言ってやりたい。

そして愛したいな、わたしやあなたの愚かさを。

 

だからホットワインで顔を火照らす。

グラスの底にザラメが残る。

ほうら、すこしだけ見えてきた。

 

ひりつくほどの孤独を感じたとしても

わたしの隣には世界というもう一本の木があります

わたしは木をノックすることをやめないでいたい

 

大切なのは空をたたえること。

杏色の空。雲。心を許すこと。

鉛色の空。雲。許すこと。許すこと。