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tayutauao

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7月7日、海と花束

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「僕たちはいつも叶わないものから順番に愛してしまう」

 

豆電球のついた低い天井

外はうだるような暑さでコンクリートがゆらゆら揺れて

買ったばかりの水は汗をかきながらぬるくなっていく

そんな真っ暗な部屋の中で叶わないものばかり数えてしまう。

一緒に寝た男の子

枯れない花

明るい街の満天の星

おぼつかないからだ

いえないことば

いえないことば

 

とりこぼしては思い出す

繰り返して今がある

レコードをまわしては止める

同じ曲がジリジリと何度か流れる

ピアスが安定しなくて血が出る

わたしの血は赤い

おもしろいことなど書けやしない

ハッピーエンドなんて書けない

煙草は煙をまいて

わたしは大人になったふりをする

 

きのう電車にとびこもうとして

片道分のお金だけもって家を出た

知らない街に行きたかった

何度か試そうとしたけれど

こわくてこわくて

飛び込めなかった。

帰り道、泣きながら

まだなんとかなるような気がして

不思議と明るい光が見えて

わたしはその光を目指して家路についた。

ままならないことを愛していた。

 

いま恋人がとなりで怪獣みたいないびきをかいている。

ときどき抱きよせられてわたしの名前を呼ぶ。

恋人がわたしの名前を呼ぶ。

わたしのしあわせはこれっぽっちだ。

とても満足している。