tayutauao

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5月18日、YOU

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俺たちが考えることをやめていたのは、軍事的戦略のことだけじゃなかった。静かに物思いに耽る瞬間、ありえた可能性や、別の場所に続いていたかもしれない道について考える瞬間も俺たちは自粛していた。

 過去を振り返って、別の恋人や町について考える瞬間。俺たちが行ってみて、ここが自分のいるべき場所なんじゃないかと思った場所。果樹園とオークの木陰があって、本物の川と季節がある場所。あるいは、別の人、ひょっとすると、花も灰もない別の町で、彼女とだったら…。そこから何かが生まれるなんてことはまずないが、少なくとも思い出とノスタルジーにどっぷり浸かることにはなる。

 そして、俺たちは鉛の家の中でなら好きに考えて思い返すことができたが、そこにはいつもフリエタがいて、物思いに沈んでいるような様子はすぐに察知されてしまった。

「フロッギー、何を考えているのか教えて」と彼女はよく言った。何のために戦争をしているのか、彼女はわかっていなかった。

 でも今日、俺はエルモンテの通りを歩いて、時おり、自分が別の場所にいることを想像してみた。そよ風が花と堆肥の匂いを運んできて、俺は我に返って、サンドラのこと、そしてフリエタのことに引き戻された。サンドラが俺の首にインクを付けて、俺が彼女の服に花びらを詰め込んで、二人の愛と、カーネーションから生まれたギャングのお祝いをした、あの日。

 

 

「People of Paper」(p170、フロッギー)