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7月7日、さよならミッドナイト

 

「どうして人は思いを伝えるんだろう」

「どうして人は思いを伝えないんだろう」

 

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日付が変わって今日は七夕らしいけれど

織姫も彦星も毎年雲の中で会う約束をしている

わたしはホッと笑みを浮かべる

恋人たちが会うのは夜の帳の中がいいし

ましてや年に1度のデートを見られるのはきっと嫌だから

 

彼はやってきた

細い体に不似合いな大きなリュックを背負って

その肩口を両手で支えながら

ひょうひょうと風をきるようにして

 

お久しぶりです、と遠慮がちにつぶやいた彼に

わたしはおかえりといい、彼に習って

ひょうひょうと歩くことにした。

煙草を1本もらって歩く。

気持ちのいい歩き方を知っているなと思った。

 

家は片付いておらず、しかしわたしの生活感は

彼に安心感を与えていると感じた。

お酒と睡眠剤を飲むのが癖になったわたしに

それっていいんですか、と聞く彼に苦笑いをして

わたしは歯磨きのために洗面所に向かう。

 

「僕、下で寝ますね」

「いいよ、うちのベッド広いから上で寝なよ」

「じゃあお邪魔します。ありがとう」

もぞもぞと布団に潜り込んできた彼は

普段は猫背で分からなかったけれど背が大きくて

きちんと男の子の体をしていた。

触りはしなくてもそんなことはわかった。

セミダブルのベッドは広く、

私たちは触れ合うことなく眠りにつくことができそうだったけれど

私の睡眠剤は効かず、彼はずっと音楽を流していた。

たんじゅんなメロディ、かんたんなメロディのその歌を

前に海にいった時の朝方にも彼は流していて

それは私も大好きな歌だった。

 

 

テーブルの上に 缶ビールとコンドーム

隣で眠ってる僕の恋人

僕は行くよって さよならミッドナイト

もうすぐ最後の夜が明ける

 

 

 

夜が更けていく。

いつの間にか距離が近くなった私たちは

やはり眠ることができなかった。

真夜中2時の煙草

真夜中3時のアイスクリーム

そういうなんでもないことが幸せだと感じた

音楽が流れている

外は涼しいけれど湿度が高く

水の中でそっと蓋をして生きる貝のような気持ちだった

 

 

目を覚ましたら 離れ離れさ

 

何も言えなかった 何も言わなかった

 

 

それはもう確信をついているようで

でもやわらかだった

 

伝える思いと伝えない思いがあって

けれどそんなことを口に出さずとも

伝わる何かもある

彼はわたしにそれを教えてくれる

その居心地の良さも、余白も、

そういう風にして編まれていく関係性も

わたしが彼を好ましく思うのはそういう理由だった

 

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いつの間にか朝になって私たちは寝坊した

急いで支度をして急ぎ足で彼を見送る

ありがとう、と手をひらひらさせて

彼はホームに吸い込まれていった

 

 

 

 

 

 

 

 

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