3月2日、桜坂
「あなたの前途に幸おおからんことを」
そんな言葉を両手で大切に渡して
心からのありがとうをお返ししてもらって
友だちはいいものだと思う春の薄明の日。
久しぶりに話す、近況を報告できる、いい距離感。
春眠暁を覚えず、とはうまくいったもので
春の眠りは心地よくて、どこまでも夢の中にいるようで
わたしの体はふわふわと舞っている。
窓を開け放して寝たら外の空気の匂いで目が覚めたから
世界は今日もやさしいなあ。
このあいだCMで流れていた桜坂を
懐かしくなって聴きなおしてみる。
「君よ、ずっとしあわせに」
それはもう、本当のことすぎて
季節の移ろいに流されても
時間の流れに押されても
わたしの胸のうちにあるのはそれだけだ。
決して、付き合いがうまいわけではないわたしの
それでも大切にしているこころそのもののようで
ふふふ、とひとりその気持ちをまた胸にしまった。
声のない風景はしあわせだったこと。
そのように思う。
その声をもう、忘れてしまったけれど
風景がわたしをどこへでも連れて行ってくれる。
生活に追われて恋をして
書くことなんて忘れちゃいそうだ、なんて
思いながらも書いてしまうのは
この場所がわたしの生活の場でもあるからなんだろうな
3月がやってきて冬と春は仲がいいと感じて
街をぐんぐん歩いてやろう、
くったりと疲れてしまうまで働いてやろう
恋人に今日も好きだよと伝えよう
今日も生活に追われよう
ワクワクするなと思う。
浮き足立つこころを大切にして
わたしにもあなたにも幸おおからんことを。