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6月16日、ラストデイ

わたしの目の前にきみがいる。

きみは、あたりまえじゃんって笑うかもしれないけど

目の前にいるきみは、目の前にしかいない。

きみの存在のすぐ隣には、きみの不在が横たわる。

 

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世界を見渡してみる。

どうしたって、いつだって、

「きみがいること」と「きみがいないこと」は

切り離せないことなのだとおもう。

 

 

「余白」

 

 

きみ

せかい

わたし

 

繋ぐ「のりしろ」

 

 

目の前にきみがいること

それはそれ以外の空間に、

いつもきみがいないことを知る装置だ。

 

わたしってば、きみが在るよりも

きみのいない空間のほうが世界には

たくさんあるって知っている。

 

在ることだけが明らかだ。

ふれたら確かめることだ。

 

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なのにわたしときたら

目の前にいないきみを

たしかめるよりもずっと

余りにも信じすぎている。

 

 

 

 

6月15日、魔法の料理

きみの願いはちゃんと叶うよ

たのしみにしておくといい

これから出会う宝物は

宝物のままで古びていく

 

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パパのひざの温度は

もう忘れてしまったね、

 

あたたかかったこと

もちろん覚えてる

 

ママを見上げて

頭を洗ってもらった

目に入った泡の痛さも

忘れてしまったよ

 

ごめんね、というママの顔

もちろん覚えてる

 

 

 

パパとママのふとんのあいだに

わりこんで眠るのがすきだったのも

 

妹と二人、せまい2段ベッドに

寝転がってマンガを読んだのも

 

あったかかったんだ

 

 

 

おとなになったら

いろんなものを得るけれど

失ったわけじゃないけれど

もう味わえないものが

いくつもあるなあと思う。

 

 

あの日、ブランコから落ちたこと

おんぶしていた友達ごと転んだこと

2人乗りした自転車は田んぼに落ちたこと

 

寒い日、おうちに帰ると

冬の匂いがするから

その匂いの正体について

こたつの中で考えてた

その匂いは おいしそうな

夕飯の匂いに変わってた

 

あのしあわせな

匂いにつつまれて

 

包まれて包まれて

いつのまにか

ここまで歩いてきてたんだね

 

 

でもそれはなにも

失ったんじゃないからね。

 

失ったんじゃない

誰にも奪えないものだよ

 

だってそのぬくもりで

わたし育ったんだものね

 

消えるわけない

 

 

 

きみの願いはちゃんと叶うよ

たのしみにしておくといい

これから出会う宝物は

宝物のままで古びていく

 

 

 

 

6月14日、Tiny Tiny Tiny

 

 

 

糾弾し続ける、
憎悪 の 指。
背をこごめ、
逃げ去って行くのも、
ぼくの後ろ姿 。
あれ以来、
空飛ぶ夢も、
いっこうに楽しい
ものではなくなった 。


地球の
引力から
逃れても、
いずれ
泳ぎ続けるのは、
涙の海 。

 

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安部公房

 

 

 

6月3日、いかれたBABY

どういうことがさいわいなのかを知っていた。

生まれる前から、ずうっと前から知っていた。

 

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限りなく透明に近いブルー」を身にまとって

いつもどこかに忘れ物をしてきたような気持ちになる。

そこに着いたのは日が暮れるほんのすこし手前。

波と風の音がどんどんと静けさに変わってゆく間に

きみとわたし、あやとりするみたいに話しながら

まだぬくみの残る砂の上でゆっくりと煙草を2本吸った。

海はわたしにとって、目の前にいるきみのまつげの先にある視線を追いかける場所だ

海はわたしにとって、いつも、きみに、恋する場所だ

 

言葉は万能じゃないのに、

人の気持ちはわからないのに、

そんなことわかってるのに、

どうにかしてわかりたいと、伝えたいと、

いつも願ってる

もがいている

 

苦しいとき写真が解き放ってくれる

溺れていることを忘れて、ただただ笑顔になる

この世のものじゃないみたいなきみの存在感

ありがとう、ここに居てくれて

ありがとう、触れられる距離に居てくれて

 

何もない場所にこそ恋は生まれる

見えているもの、見えていないもの

すべてのものが満ちているからだ

そのことに気づくからだ

 

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今、光で描かれた眩しいきみに恋をしている

 

5月18日、YOU

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俺たちが考えることをやめていたのは、軍事的戦略のことだけじゃなかった。静かに物思いに耽る瞬間、ありえた可能性や、別の場所に続いていたかもしれない道について考える瞬間も俺たちは自粛していた。

 過去を振り返って、別の恋人や町について考える瞬間。俺たちが行ってみて、ここが自分のいるべき場所なんじゃないかと思った場所。果樹園とオークの木陰があって、本物の川と季節がある場所。あるいは、別の人、ひょっとすると、花も灰もない別の町で、彼女とだったら…。そこから何かが生まれるなんてことはまずないが、少なくとも思い出とノスタルジーにどっぷり浸かることにはなる。

 そして、俺たちは鉛の家の中でなら好きに考えて思い返すことができたが、そこにはいつもフリエタがいて、物思いに沈んでいるような様子はすぐに察知されてしまった。

「フロッギー、何を考えているのか教えて」と彼女はよく言った。何のために戦争をしているのか、彼女はわかっていなかった。

 でも今日、俺はエルモンテの通りを歩いて、時おり、自分が別の場所にいることを想像してみた。そよ風が花と堆肥の匂いを運んできて、俺は我に返って、サンドラのこと、そしてフリエタのことに引き戻された。サンドラが俺の首にインクを付けて、俺が彼女の服に花びらを詰め込んで、二人の愛と、カーネーションから生まれたギャングのお祝いをした、あの日。

 

 

「People of Paper」(p170、フロッギー)