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4月16日、気持ちいい風が吹いたんです

 

 

いつの間にか

ピンクとも白とも云えぬあの花の降りしきるまぼろしの季節を通り越していた

みどりは新しく、いつも懐かしく、

こんな風に重ねていく日々のあたたかさを伝える術をわたしは持ち合わせていない。

 

“わすれたい”と思ったことのない人生を、願ったことのない時間をさいわいに思います。

どうかわたしやあなたの走馬灯がいつまでも長く永く続きますよう

いつか、両手に抱きかかえて持っていけるのはそれだけだからね。

 

名指すことのできない祈りの在り処をあなただけは知っていて

その声に言葉なく出会うのだとしたら

わたしは、そっとその歌に耳をそばだてていたい。

からだを傾けていたい。

その歌でまたひとつそれらがこの世界の実在になっていく。

そうやってこの世界にあるあらゆるものを造りなおして

どうか、わたしに教えてほしい。

あなたのうたう歌がやさしければやさしいほど泣きたくなったのは

鳥かごの窓をそっと開けられたような

もう自由になっていいんだ、と

しあわせになっていいんだ、と

言われたような気がしたからかもしれない。

 

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あなたの名前を呼ぶみたいに

春の名を呼んでみたい。

 

あなたがわたしに与えた言葉が

ついに思い出になる前に

この春の名を呼んでみたい。

 

 

 

 

4月1日、蝶々結び

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気持ちがよければそれでいいんだよ

 

それが大切な君の言葉だった

 

もつれた色彩があんまりきれいなのに

それを言葉にすることがもう難しい

ただ、薄いピンクに覆われたこの町が好きだ。

 

恋人がいないとうまく眠れない

外から帰ったら手洗いうがいをすること

空を見上げること

種から育てていたサボテンに水をやること

それらはいつの間にか君にもらった。

近道をするつもりではなくて

かといって遠回りをするつもりもなくて

誰に何を言われたってわたしは君の味方だ

もう、きっと、ずっと

ついて出た言葉は「一緒に暮らそう」だった。

 

誰とも暮らしたくなんてなかった。

結婚するならまだしも、と冷めていた。

家族とも暮らせなくなった。

自分には関係のないことだと思っていた。

ひとりでいることがわたしをわたし足らしめるのだと思っていた。

なのに、恋人はそんなところをするりと抜けだして

わたしは彼のそばにいたいと願っている。

もう、きっと、ずっと。

 

恋人のお父さんからは

一緒に暮らすということは、つまりそういうことだから覚悟しなさいと言われた。

覚悟。

考える。

頭に手を当ててみる。

こころに聞いてみる。

わたしにとっては彼と過ごす何気ない時間の中にだって、常に覚悟があった。

「一緒に生きていきたい」

はじめてそう告げた時のことをわたしは一生忘れないと思う。

わたしをこんな風にさらってくれてありがとうと涙が出たから。

今、彼と生きることは、自分の人生を歩むことと同義なような気がしている。

あなたまかせにまわってゆく世界が、今は、ただ眩しい。

ただ眩しいだけではなくてその光のプールの中にそっと足を差し入れて

水遊びをしてもいいんだ、という感覚。うまく言えやしない。

 

それでも、変わらない。

もう、きっと、ずっと。

しあわせのこわさやうしろめたさで身を縮こめていた。

それが自分勝手なことだと教えてくれた彼がしあわせの象徴。

守るから。しあわせにするから。

そんなこと自分でなるものだと思っていたのに

ことん、と彼の肩にもたれかかっているわたしがいる。

魔法みたいだなって思いながらそこに

わたしなりの覚悟がぎゅう、と詰まっていること

恋人は知っているのかな、どうなのかな。

 

happyでlaugh laughな1年にしよう、と約束した。

やっとトンネルを抜けた気が、今している。

これからも、きっと、ずっと、だ。

 

 

 

 

 

 

 

3月14日、スケボーマン

 

今 行きたいところはにわか雨の降る暗くて深い夜の海。

熱のこもる体だけの発光するそこで、

すべて投げ打って煙草を吸いたいのだ。

この世界はひらかれているように感じることもあるけれど

卵の薄い皮に包まれている。今は。

 

ずっと前にきれいな思い出にしたはずの記憶が

わたしのこころをズタズタにするんだ。

想いなんて捨ててしまったのに、

いまだにこんな気持ちをぶつけてくるあなたを本当にすごいと思う。

 

ねえ、海に行きたいや。

何も考えられないくらい暑くてうだるみたいな

夏の真夜中の海はわたしたちの世界そのものだった。たぶん。

 

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書きたいことを書いていればしあわせなのか?

眠るだけでは、食べるだけでは、

生きていると満足に感じられない体を

頭をこころをバカヤロウと思いながら、

まだ、果てのない夢を見ている。

 

わたしの書く何かが誰かを救うことがあるとすれば

きっと間に合わなかったこともあるだろう。

あと一歩、叶わなかったことがあるだろう。

大切な時間に遅れてしまったわたしを

その誰かはゆるしてくれるだろうか。

そっと世界の淵に足をかけて

わざと踏み外したあなたが

首をくくったあなたが

どこにでも咲く春の花のように

儚くもうつくしくてそのことが今日も

わたしを世界につなぎとめる。

書くことを与えてくれる。

書くことを諦めさせてくれない。

だからわたしはあなたのいのちに感謝している。

こころから花束を贈る。

おやすみなさいと労いの声をかける。

 

 

 

 

 

 

 

 

3月9日、All my Time

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春曇りの朝の中で、一晩かけても

朝は朝を見つけられなかったのだなあと思った。

レモン色と藍色のドラマチックな朝は夢の中。

 

さすがに心が参ってしまいそうだった。

今の時点の俺はクソだよ、とのたまう君の話を

暴走する列車か馬みたいだと思いながら聴いていた。

愚痴っぽくない、言い訳がましくない君の話に潔さを感じていた。

その評価を別に否定もしないけれど肯定もしないよ、と告げて

1度電話を切った。

 

わたしだって、もうこんな生活イヤだって

言ってしまえたらいくらか楽かもしれないのに

自分の人生に責任を持てなかったわたしのために

そんな言葉は用意されていない。

「生かしてくれてありがとう」の人生や生活に、イヤも何もないのだ。

心が荒んでしまいそうになるなあ。

だから口ずさむみたいに、シャボン玉飛ばすように、yeah,  my life is shit.

 

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「あらゆることをゆるしたい」と言いながら生きている

今のわたしがその言葉の通りなのだとその人は言った。

わたしもきっとその通りだと思った。

いつかの到達目標みたいなものではなく、姿勢の話だからだ。

 

幸せも不幸せもない場所に行きましょう

そんな言葉が今、

わたしの人生の文脈の、水脈の只中をほとばしっている。

 

 

 

 

 

3月2日、桜坂

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「あなたの前途に幸おおからんことを」

そんな言葉を両手で大切に渡して

心からのありがとうをお返ししてもらって

友だちはいいものだと思う春の薄明の日。

久しぶりに話す、近況を報告できる、いい距離感。

 

春眠暁を覚えず、とはうまくいったもので

春の眠りは心地よくて、どこまでも夢の中にいるようで

わたしの体はふわふわと舞っている。

窓を開け放して寝たら外の空気の匂いで目が覚めたから

世界は今日もやさしいなあ。

 

このあいだCMで流れていた桜坂を

懐かしくなって聴きなおしてみる。

「君よ、ずっとしあわせに」

それはもう、本当のことすぎて

季節の移ろいに流されても

時間の流れに押されても

わたしの胸のうちにあるのはそれだけだ。

決して、付き合いがうまいわけではないわたしの

それでも大切にしているこころそのもののようで

ふふふ、とひとりその気持ちをまた胸にしまった。

 

声のない風景はしあわせだったこと。

そのように思う。

その声をもう、忘れてしまったけれど

風景がわたしをどこへでも連れて行ってくれる。

 

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生活に追われて恋をして

書くことなんて忘れちゃいそうだ、なんて

思いながらも書いてしまうのは

この場所がわたしの生活の場でもあるからなんだろうな

 

3月がやってきて冬と春は仲がいいと感じて

街をぐんぐん歩いてやろう、

くったりと疲れてしまうまで働いてやろう

恋人に今日も好きだよと伝えよう

今日も生活に追われよう

ワクワクするなと思う。

 

浮き足立つこころを大切にして

わたしにもあなたにも幸おおからんことを。