9月22日、僕の宇宙
幾つかのことを思い出してみる、順不同に
ー両手の指から溢れるほどの桜の花弁
ーいい匂いのする香水のつけたての手首の内側
ーわたしじゃ物足りないといった男の子
ー窓際の虫をプツリと殺したつまらなかった英語の授業
ー終わりの感覚
生きることとは過去を思い出すことなのかもしれない。
わたしは過去を思い出して生きてきたからそう思うのかもしれない。
いつも派手な遊びの後ろには虚しさが隠れていて
わたしはそいつがとても恐ろしくもあり親密さも感じていた
もう戻れない青春時代というものが誰にでもあって
そのことがわたしをほんの少し柔らかくする
そう、もう戻れない場所ばかりが増えていくね
思い立って真夜中の海に出かけた
海には恋のものがたりが必須だから
わざとカメラは持って行かなかった
土砂降りだった雨が止んで月明かりが辺りを照らした
はしゃぐ母親が少女のように見えた
潮風で髪がベトベトになった
足をつけた水がまだ暖かく夏の匂いを残していた
それだけで十分すぎる夜だった
それだけで美しすぎる夜だった
いつも派手な遊びの後ろには虚しさが隠れていて
その夜わたしはそいつに切なさとしか言えないものを感じていた
photo by R