7月11日、問うてる
アンコールを待っていた。
パチパチパチ
たくさんのパチパチ
徐々に減ってゆくパチパチ
けれど誰かがそれを止めない。
すべてが終わることをその誰かが許してくれない。
「アンコールだ!もう1度その赤く古い匂いのする幕をあけて!もう1度だ!」
わたしは最後までパチパチをすることはない。
アンコールに導かれる拍手をすることはない。
そういうタイプの人間だから。
理由はそれだけ。
でも終わりが来ることはこわい
怯えている
メキシコのお祭りの会場のすべてが
どうっと動いている中で静かに死んでいた犬のようにではない。
たとえばそれはナイアガラの滝のように怯えている。
終わりが来ることが怖いなんてとても普通だ。
一般的なコワさだ。
愛犬の死
枯れてしまう花束
錆びついていく公園のすべり台
化粧のりの悪くなった母親
そういうことがわたしにこわさを与える
ひらがなの文字をひとつずつ集めては塗りつぶしてくような季節に
ああ、少しばかり多くのことを話そうとしてわたしは死んでしまった。