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tayutauao

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1月13日、Nature

 

こんにちは、冬も深むことを知ったような日々です。

さむい、さむい、と言いながらそれすらも楽しむことができる。

光が薄いガラスを断面から見たように射して、眩しくて、美しい。

 

日々のことを書こうと思います。

 

朝方には、薄明の空の粒子がすりガラス越しにわたしの目を覚まします。

天井からぶら下がった植物は嬉しそうにその陽を浴びてゆっくりと呼吸を始めます。

それをしばらく眺めます。それはわたしだけに許された祈りの時間です。

頭を置いていた部分だけ暖かな枕にぎゅう、と顔を押し付けて

いつの間にか荒涼とした大地の岩のオブジェのようになった布団を

何度か足で蹴り、整形します。それはわたしだけに許された儀式の時間です。

 

わたしはこの日記を職場で書いています。

目の前にはスイッチを入れてもつくことのないデスクライト

右手には珈琲を淹れるための一通りの道具や豆

左手には仕事のメモと村上春樹の文庫本、携帯電話

そんなものが並んでいます。

前を見るとサッシから光が漏れ、

薄暗い部屋の中では1番明るいところに

わたしは座っているということになります。

 

ここは靴職人のアトリエなので

あの私たちのすきな革の匂いがし、

革を削る機械の音、金槌の音が心地よく響きます。

たまに職人さんと話します。

他愛のないことです。

ラジオが流れています。

ちょうどいい音量です。

熱いマグカップに入った珈琲が

やけに丁寧でおいしく感じられ、

突然投げられる事務仕事もはかどります。

 

こういったことごとは、おそらく、とても素晴らしいことです。

健康で、心地よくて、やさしいことです。

今の自分には必要なことなのだろうと宇宙には届かないにせよ、思いを巡らせます。

 

仕事を終えると家に帰ります。暖かな家。けれどわたしの場所じゃない家。

家族に愛されて幸せなわたしの家。けれど、そこはわたしの場所ではない。

「ここは自分の居場所でないと思う人間は不幸だ!」

と誰かが叫んだことがありました。

その瞬間に、旅人の匂いが漂ってくる。そう、わたしは幸せで不幸せなのです。

 

夜ごはんを食べることはあまりありません。

煙草を吸う以外は、リビング・ルームに足を踏み入れることもなく、

わたしは早々に自分の王国へ帰っていく。或いはジャングルへ。

あまく、春の日に飛ばすシャボン玉のような匂いのするアロマを炊いて

ジャック・ピアソンの写真集をめくったり、恋人と電話をしたりすると

もう、だめ。眠くなってくるのです。それでいつの間にか眠ってしまいます。

 

「頭の中では話してるのがわかるんだ。だから相槌を打つの。」

恋人はそう言います。わたしはまったくその通りだと思っていて、

眠りにおちてしまう甘やかな数分間、わたしは頭の中で恋人と会話をする。

 

そしてきたる朝。

少しだけ早く目が覚める朝たち。

祈りの時間。儀式の時間。

すりガラスの向こう側で雲が流れているだろう。

鳥たちがもうすぐ起き出すだろう。

大事にしよう、日々を。

 

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とびきり愛そう、日々を!