12月11日、5:55
吊革が示し合わせたかのように、
真下に座る眠ったサラリーマンもそれが宿命であるかのごとき揺れている。
時速いくらかの箱の中で、目の前の夢たちがスーパーボールになった。
どうかあなたの夢が溶けてしまいませんように。
わたしが願えるのはいつだってたったそれだけのこと。
世界中に南向きの窓がいったいいくつあるのか
雑木林の中、茂るみどりの木やその根をうまく分けて駆けるうつくしい馬のこと
ビリヤードの球が置かれっぱなしの動きたい球にぶつかるときの琥珀色のウイスキーのような音のこと
わたしがかんがえていたのはそんなことばかり
過ぎることと足りないことが、でこぼこな体中に染みわたる。
気付いたら午後8時30分過ぎの車内はわたしだけになっていた。
まるで「木の周りを回りすぎ溶けてしまったトラのバター」のお話のようだと思った。
たいせつなのは想像をすること
そうでしょう?
それは起こるかもしれないし、あるいは起こらないことかもしれない
誰かがそんなことに意味なんてまるで…と
わたしの前に磨りガラスの衝立を1枚そっと立てるかもしれない。
けれどたいせつなのはつかれてしまわないこと
そうでしょう?
だれも馬鹿にはできないはずだよ。
あなたは決して自分の岸辺を捨ててしまうことなんてない。