11月2日、夏のせい
指先の、産毛の、唇の、まつげの先の1mm外側は
わたしの及ばないところなのだ、といつも思う。
あきらめているのではない。怖がってるのでも。
及ばない世界が思いのほか広いんだということ。
なんだかいつも苦しいことばかり思い出してしまう人生だね。
足りていなかったこと。過ぎてしまったこと。
ギリギリのところで目を背けてしまったことを。
だいじなひとの泣いてるところよりも、差し伸べられなかった手のことを。
心のきゅっとする記憶こそがわたしをわたし足らしめてる、そう思う人生だ。
だからこそ、かさぶたが、ピアスの跡が、大きな痣が、
消えなければいいのにと思っているのかもしれない。
傷は癒える。
熱も冷める。
とてもさみしいことのよう。
「一緒に生きるってなんだろうね」とこぼした人と過ごした夜があった。
わたしは、ほんの少しその人のそばにいたかった。